読書に集中するための心得として「読書三到」という言葉があります。
「眼到(がんとう)」——目を凝らしてじっくり読むこと、
「口到(こうとう)」——声に出して読み上げること、
「心到(しんとう)」——精神を集中し、深く味わうこと。
まさに本日、私はオンラインの読書会に参加する予定ですから、声を出して読む「口到」の実践を楽しみにしています。この読書会は、東京中小企業家同友会千代田支部の有志を中心に「読んでみ隊」と名付けられ、毎回テーマを設けて自由闊達に意見を交わす場です。今期のテーマは「10年後の仕事ってどうなってる?」。AI、ロボティクス、リモートワークといった技術や働き方の変化が著しい中で、果たして10年後はどのような世界になっているのか、皆で考えるのです。
今回私が取り組むのは、入山章栄先生の『世界標準の経営理論』。前回12章を読み進めていましたが、そこでは「新しい知」と「新しい知」との組み合わせは失敗が多い反面、中長期的なイノベーションをもたらし、企業が陥りがちなコンピテンシー・トラップを回避するために有効だと述べられていました。要するに、変化の激しい環境下では既存の強みに安住せず、新しい知見を取り入れ続けることで組織を活性化しようということです。
本日は続きの13章を朗読します。音読を通じて内容が一層頭に入るのはもちろん、参加者同士がリアルタイムで聴き合うことで生まれる臨場感や意外な気づきも大きな魅力です。そして私は、この「新しい知」と「新しい知」を組み合わせる重要性に、経営の神様とも呼ばれる渋沢栄一が『青淵百話』で説いた「学問と実践の一致」に通ずるものを感じます。
渋沢栄一の『青淵百話』には、彼が自らの経験を通じて得た多彩なエピソードが数多く収められています。とりわけ印象的なのは「広く学ぶこと」の大切さを力説している点です。彼は「利己」の先にある「利他」を見据え、社会全体の繁栄を志向したからこそ、多方面の学問や文化に関心を持ち、それを融合して新しい価値を生み出しました。また、学んだ内容を実践に落とし込む際には、失敗を恐れず挑戦を重ねてきた姿勢が随所に見られます。
こうした渋沢栄一の在り方は、私たちが未来の仕事を考えるうえでも大いにヒントになるのではないでしょうか。例えば、いま私たちが持っている知識や強みだけに頼り切っていると、近視眼的な視点になってしまう恐れがあります。新たな学びや未知の領域に飛び込むことはリスクを伴うかもしれませんが、そこにこそ次の時代を切り拓く可能性が眠っているのです。
読書はまさに、新しい知見との出会いの宝庫です。さらに渋沢栄一のように、学んだことを実践に生かす「知行合一」の姿勢を持てば、単なるインプットで終わることなく、具体的な行動へと結びつきます。「読んでみ隊」の読書会は、そんな行動のきっかけを作る重要な場となっています。参加者が本の内容を自社の経営や個人のキャリアに結びつける議論をするたびに、私自身も「こういう視点があったか!」と新鮮な驚きを得るのです。
今年は「10年後の仕事」をテーマにしていることもあり、ディスカッションはさらに踏み込んだものになっています。AIが普及して仕事がどう変わるのか、社員の働き方や人材育成はどうあるべきか。そこで浮かんでくるキーワードは「新しい知をどうやって取り込むか」。今日、私が声を出して読む13章の内容も、この問いに対して大きな示唆を与えてくれることでしょう。
読書三到のうち「眼到」と「心到」は、一人でもある程度身に付けやすいかもしれません。しかし「口到」は、オンライン読書会のように「人に聴いてもらう」場があればこそ得られる体験です。読んでいる最中の微妙なアクセントや間(ま)にも、そのときどきの自分の理解や感情が反映されるからです。そしてそこから生じる対話こそが、新しいアイデアを生む原動力になると感じています。
渋沢栄一が『青淵百話』で教えてくれるのは、「学ぶことの尊さ」と「実行することの大切さ」だけではなく、同じ志を持つ仲間を得る意義でもあります。私たちも「読んでみ隊」を通じて、互いの学びを刺激し合える仲間と出会えるのは、大変心強いことです。「読むこと・声に出すこと・心で味わうこと」これらの行為を通じて、私自身が10年後、どういう仕事や人生を送っているのか、今からワクワクが止まりません。
こういったことに興味のある方は、https://seien100.com/pre-lp/
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